最近は見かけなくなったがこの歌はキンチョーの夏の定番CM、「日本の夏、キンチョーの夏」がベースにあるのだろう。
このコピーと共に仕掛け花火でドドドドッとKINCHOのロゴが現れるというCM自体が夏の風物詩になっていた。
さて、この歌「日本の夏童貞の夏」だけでも聞きなれた安心感のあるリズムと小学生男子みたいなユーモアが面白いのだが、
作者は「やがて童貞の秋」さらには「童貞の冬」と容赦なく畳み掛けてくる。
童貞は夏だけの風物詩ではない。童貞には秋もあり、冬もあるのだ。童貞が冬に近づくにつれ、なんとなく透明感が増し、美しくなっ
ていく気がする。そして読後にはひんやりとした余韻までもが漂う、不思議な歌に仕上がっているのである。
さてこの歌には春がない。童貞はそのあとどうなっただろう。
俳句における季語では一年を通して存在する月が秋の季語であったり、虹が夏の季語であったりして、それ以外の時は春の月とか冬の
虹と言わなくてはならない。童貞も一年中いるものだが、もし歳時記に入れるとしたらどこに入るのかな、なんて考えてしまった。
もし俺が北に向かって歩いたら俺のちんこは北東を向く
この歌もどうしても気になってしまう。 ええっ?方位磁石なんだ。そして北じゃないんだ、しかも鬼門・・・
こんなシュールな短歌は初めてで、こんなん出されたら無条件降伏してしまう。今後も価格未定さんの作品に熱視線を送りたい。
ご本人のTwitterより引用
2018年12月17日
20.マスクして小鳥の気分 あ、雪だ IZU可愛い句である。医療用のマスクだろうか?お医者さんが良くしているマスクは先がとがって、くちばしに見えないこともない。
絵はパウル・クレー『天使というよりむしろ鳥』。この絵のタイトルを知ると、「白衣の天使」という言葉があるように主体は医者
かなぁとも思う。でもマスクのせいで「天使というよりむしろ鳥」なのかもしれない。結句の「あ、雪だ」もとぼけた味わい。
IZUさんは名画に俳句を合わせる作品が面白い。この手の手法でやりがちなのが絵で俳句を説明しちゃうやつ、あるいはその逆であ
る。しかしIZUさんの作品はそういったものとは一線を画している。ピカソやモネらの巨匠の名作に平気で「すき焼き」とか「しまむ
ら」とか「湯豆腐」をぶつけてきているのだが、その組み合わせが芸術の域に達しているのである。
私の場合、IZUさんチョイスの名画を見て「今日はどんな俳句がついているのだろう」と俳句を読むといつも予想の斜め上を行くもの
で、笑ってしまう。前に笑いの研究の本を読んだとき、人が笑う要因の一つとして「ギャップを感じたとき」ということを知った。
IZUさんの作品はまさにそこを突いてきている。俳句だけでもいいのだが、ぜひTwitterで名画と一緒に鑑賞していただきたい。
冬うららペンギン並ぶ昼昼昼
この俳句の中にペンギンが三匹歩いているのが見える。「昼昼昼」である。「公」の字が人のいいおじいさんに見えたりする(え、見
えない?)ように一回そう見えるともうペンギンにしか見えない。絵は黒田清輝の『智・感・情』
冬帽に入れて渡され悴け猫
悴け猫(かじけねこ)は冬の季語で寒さに悴んでいる猫のことである。冬帽子に入ってしまっているのが猫の小ささや悴んでいる様子
が出ていていい。絵は猫好きでも知られる藤田嗣治の『自画像』。季語が重なっているのだけが悔やまれる。
ご本人のTwitterより引用